
風景写真の撮影は、日の出、日の入りの前後数時間が勝負・・・当然、朝は早く、まだ暗いうちから動き出さねばならない。
真っ暗な空を睨み、星の見え方でその日の朝の天気を予想する。
だが、カナダやアメリカの西部海岸地域には「モーニング・クラウド」と言う言葉がある。
海上と陸地での熱伝導の違い、北太平洋の冷たい海流、様々な要素が絡み合うのだろうが・・・早い話が、早朝に海から流れ込む、低く垂れ込めた霧のような雲の事をこう呼ぶのだ。
雨雲等とは違いこの雲は、太陽が昇り気温が上昇してくると自然と消えてしまうので、つまり《朝の雲=モーニング・クラウド》と呼ばれているそうだ。
言葉だけを聞いていると、なんだか少しお洒落な響きもするが・・・これが撮影となると、かなり厄介な相手になる。
天気は良いはずなのに、空は全く見えず辺りは薄暗く、光や時間の流れがまるで読めない。
では、撮影を中止にすれば良いのかと言うと、この判断がまた難しい。なぜなら、この雲は朝の雲、突然消えてなくなるモーニング・クラウドだからだ。
僕は長年続けて来た撮影の勘で、雲が晴れた場合の辺りの様子を予想しながら森の中を歩き、ある地点でカメラを構えて待つ事にした。
しーんっと静まり返った森の中に、遥か彼方からかすかに波の砕け散る音だけが響いている。
徐々に雲の厚みが削られていくと、それに比例して雲の流れがはっきり目視出来るようになっていく。
「よしっ・・・晴れ間は近い」
僕は心の中でそう叫び、カメラを持つ手に自然と力が入る。
サッと開けた雲間から朝の光が差し込んで来ると、それまで眠っていた森全体が息を吹き返したように輝き始める。
なんとも言えない神秘的な空間を演出してくれるモーニング・クラウド。
この朝の不思議な時間帯が、僕はたまらなく気に入っている。
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