
ザーーーーーー
鬱蒼とした寒帯雨林の森を擦り抜け、生暖かい風と供に、わずかな水の音が聞こえて来た。
「滝はこの奥か・・・」
僕は小さく呟き、辺りを見回した。
頭上には、苔むしたジャングルのような森が覆い被さり、昼間だと言うのに、今はもう太陽の位置さえ分からない。
延々と続く森の中を突き進む時、いつも心のどこかに不安や危険と言う言葉が見え隠れする。でもそんな時、どこからともなく聞こえて来る水の音は、歩き疲れた体に不思議な程の力を与えてくれる。
「よっし・・・行くぞ」
僕は自分自身に気合を入れ直し、少しだけ歩を早めた。
しばらく行くと、薄暗い森の先に眩い光が見え始め、わずかに聞こえていた水の音は、森全体を揺るがす程の轟音へと変わっていった。
生暖かかった風は、もう遠い昔の事。
今は、小さな水飛沫の軍団を引き連れ、凍える程の冷風となって僕をいじめにやって来る。
直ぐ間近から見上げる大瀑布の迫力。
怖ろしい程の音と風を撒き散らし、暗い森の奥から現れた魔人のようにも思えてしまう。
だが、その反面・・・・
滝の撮影時に、僕はいつも全くその逆の印象を持つ。
いつの間にか風も音も水も気にならない不思議な世界に迷い込み、ファインダー越しに伝わって来るのは、滝の持つ力強さではなく、繊細で、優しく、物静かな雰囲気だった。
ドキドキ、ワクワク、興奮しながら撮影しているのに、何故か心が落ち着いていく。
どうしてなんだろう・・・この不思議な感覚は?
なんなんだろう・・・この魔法のように引き付けられる魅力は?
いつの間にか西に傾いた太陽が、飛び散る水飛沫を照らし始めていた。
それはまるで魔法の城の周りを飛び交う妖精のようにも見えた。
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