Photo breeze from CANADA (PhotoOfficeFujie)

カナダ・ブリティッシュコロンビア州・ミッション在住のカメラマン《藤江幸宏》が、バンクーバーの情報サイト「メイプルタウン」に掲載の写真を中心に、フォト・ブログとして毎月1日と15日にアップロード。

女神

     




太陽は既に大きく西へと傾き、夏だと言うのに吹き付ける風はとても冷たかった。

対岸の工場は既に作業を終えたのか、ひっそりと静まりかえり、いつもより少し荒れ気味の波だけが、バシャバシャと堤防を叩き続けていた。


この時期には珍しい夕暮れ時の霧が、薄っすらと二人の周りを包み込んだ時、男が静かに言った・・・

「寒くないかい?」

女は黙ったまま小さくうなずいた。
男は女の腰に腕を回し、優しく引き寄せたが、やはり黙ったままだった。

少しくたびれかけたブルックリンブリッジの下で、二羽のカモメがじゃれあう声だけが、少し異様なくらいキーキーと、よく響く。


もうほとんど沈みかけの太陽が、自由の女神のトーチに火を灯すと、それを合図にマンハッタンのビル群も明かりを灯していく。


「すごく・・・きれい・・・だね」

男が途切れ途切れにそう言った。

「夕陽?女神?ビルの夜景?・・・・それとも、私?」

女は声にはせず、心の中でそう聞き返していた。


キーキー・・・
二羽のカモメが、何かを急かすようにまた鳴いた。


「この景色をずっと一緒に見ていたいね」
男の言葉に、女は黙ったまま顔をあげた。


男は、女の腰に回した腕をもう一度優しく引き寄せ、こう続けた・・・
「10年後も、20年後も、30年後も・・・」

だが、嬉しさと不安からか、女は唇を軽く噛んだまま、言葉を探していた。


相変わらず堤防を叩き続ける波の音が、拍手しているようにも聞こえ、邪魔しているようにも聞こえた。

男は耳元に顔を寄せ、静かにもう一度言った。
「ずっと・・・一緒に」

女の口元が少し動いた・・・「本当に?」

今まで噛んでいた女の唇は、少し赤く染まっていた。

男は短くキスをしてから、こう言った・・・

「二人の女神に誓って・・・」




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妖精の住む城

     妖精の住む城



ザーーーーーー


鬱蒼とした寒帯雨林の森を擦り抜け、生暖かい風と供に、わずかな水の音が聞こえて来た。

「滝はこの奥か・・・」

僕は小さく呟き、辺りを見回した。

頭上には、苔むしたジャングルのような森が覆い被さり、昼間だと言うのに、今はもう太陽の位置さえ分からない。

延々と続く森の中を突き進む時、いつも心のどこかに不安や危険と言う言葉が見え隠れする。でもそんな時、どこからともなく聞こえて来る水の音は、歩き疲れた体に不思議な程の力を与えてくれる。

「よっし・・・行くぞ」

僕は自分自身に気合を入れ直し、少しだけ歩を早めた。


しばらく行くと、薄暗い森の先に眩い光が見え始め、わずかに聞こえていた水の音は、森全体を揺るがす程の轟音へと変わっていった。

生暖かかった風は、もう遠い昔の事。
今は、小さな水飛沫の軍団を引き連れ、凍える程の冷風となって僕をいじめにやって来る。

直ぐ間近から見上げる大瀑布の迫力。
怖ろしい程の音と風を撒き散らし、暗い森の奥から現れた魔人のようにも思えてしまう。


だが、その反面・・・・


滝の撮影時に、僕はいつも全くその逆の印象を持つ。
いつの間にか風も音も水も気にならない不思議な世界に迷い込み、ファインダー越しに伝わって来るのは、滝の持つ力強さではなく、繊細で、優しく、物静かな雰囲気だった。

ドキドキ、ワクワク、興奮しながら撮影しているのに、何故か心が落ち着いていく。

どうしてなんだろう・・・この不思議な感覚は?

なんなんだろう・・・この魔法のように引き付けられる魅力は?




いつの間にか西に傾いた太陽が、飛び散る水飛沫を照らし始めていた。

それはまるで魔法の城の周りを飛び交う妖精のようにも見えた。





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