
ずしっ・・・ずしっ・・・
ゆっくり、一歩ずつ、僕は森の中を進んでいた。
何も急ぐ事は無い、彼は目覚め、今年もちゃんとこの森に帰って来た。
ずしっ・・・ずしっ・・・・ずしっ・・・
もうそこには、さくさくした落ち葉の感触はなく、ざくざくした雪の感触もない。
あるのは、ずしっり、しっかりとした大地の感触だ。
でも彼は、夏のようなカチカチに固まった大地でも、冬のようにグチュグチュ、ツルツルした大地でもない。
僕の重みを柔らかく受け止め、しっかりとつかまえていてくれる、彼にはそんな優しさがある。
僕は彼が帰って来た事を足の裏から知り、広がっていく彼を体全体で感じていた。
ずしっ・・・ずしっ・・・ずしっ・・・
「ふ〜っ」
切り株に腰を下し、大きく息を吐き出す。
歩いていると気づかないほどの小さな風が、今はとても心地良い。
頭上がざわめいている事に気づき、ふと視線を向けると、そこには・・・キラキラ輝く緑の新しい屋根が、森一面に広がっていた。
「おかえり」
僕は、《春》と言う名の《彼》に挨拶をしてから、静かにシャッターを切り始めた。
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