
僕達を楽しませてくれた素敵なエメラルドグリーンの湖は、堅くて冷たい冬の扉の下に、もうずっと隠れたままだった。
夏の間、彼はとても人気者だった。
多くの人達が毎日彼に挨拶にやって来て、直ぐそばに腰を下ろし、のんびりとその表情を楽しんでいた。
綺麗に空や山の姿を映し込み、いたずら者の風にはピチャピチャと音を立てて応えてあげ、太陽の温もりにキラキラ輝いて喜んでいた。そんな彼の姿を見ているだけで、僕達は皆、不思議なほど優しい気持ちになる事が出来た。
だが、秋も終わりが近づくと、エメラルドグリーンの彼は少しずつ顔色が悪くなり、やがて真っ白でカチカチの冷たい奴になってしまった。
もう風が吹いても、太陽が語りかけても、何も返事はしてくれない。
また、長い長い冬の扉を閉めてしまったのだ。
もう僕達にはどうする事もできない。一度閉まってしまった扉は、簡単には開ける事は出来ず、あとはただじっと待つしかなった。
ヒュー・・・ウゥー・・・
長く暗い冬が続き、彼に挨拶に来る人はもうほとんどいなくなった。
ビューウゥー・・・ヒュー・・・・
弱々しかった太陽が、また少しずつ元気を取り戻しはじめた頃、彼が動き始めた。
それまでどんなに押しても叩いても、踏み付けて蹴飛ばしてやってもびくともしなかった分厚い冬の扉に、今、ようやく《春》と言う名の亀裂が入り始めた。
ベキベキベキッ・・・・ガリガリ・・・グォシャーン
間近で聞いていると恐怖すら覚える凄まじい轟音を響かせ、あちこちからけたたましい《春の雄叫び》が響いて来る。
それはまるで、閉じ込められていた魔物が、深い眠りから目覚めたようにも見える。
長い間、自分を閉じ込めていた冬の扉に復讐をするかのように、彼はいつまでもいつまでも破壊活動を繰り返す。
そしてその容赦無い姿に、僕達はいつか不安を抱く・・・「もう以前の人気者の彼ではなくなったのか?」
ガリガリガリッ・・・
また大きな音が響き、薄くなった冬の扉の下から、見覚えのあるエメラルドグリーンの彼がチラッと顔を覗かせた。
「大丈夫、前のままだ」
彼の姿を見つけ、山も空も雲もみんな嬉しくなって集まって来た。
「押すな押すな・・・狭いんだから」
「みんな待ってたんだから、自分だけ映り込むんじゃないよ」
「ほらっ、並んで並んで・・・」
彼の姿は、まだまだ小さく弱々しい、でもみんなは声を揃えてこう言った・・・
おかえり・・・春の扉はもう直ぐそこだよ。
テーマ:写真にコトバをのせて - ジャンル:写真

